韓国の転職事情を調査しました!(転職編)
韓国の転職事情に迫ります!!
前回の記事では、韓国の新卒の就職率を調査しました。
その結果就職率はなかなか厳しい数字でしたが、転職市場も似たような状況なのでしょうか?
なんとなく新卒よりかは、キャリア採用の方が募集件数自体は多そうなイメージがありますよね。
そこで今回は、韓国の転職事情に迫ってみたいと思います!
韓国で働きたいと考えている方には、転職事情も気になるところですよね。
それでは、早速見ていきましょう♪
韓国の離職率はどんな感じ?
韓国の転職事情を探っていくにあたり、まずは韓国の離職率を見ていきたいと思います。
上の表は、韓国の統計庁が2020~2021年を基準に調査した「勤続年数ごとの離職率」を表したものです。
表を見ると、勤続1年未満の会社員の離職率がなんと40%越えの42.3%という数字。
「素早い離職」傾向が深刻化していることが分かりました。
2023年6月8日に統計庁が発表した「2021年働き口移動統計」によると、2020年の登録就業者は2,549万人と集計されました。
これは、1年前の2,483万2,000人よりも65万8,000人増えたこととなります。
この内、1年以内に転職した移動者は396万2,000人で、前年(367万4,000人)より28万9,000人が増加しました。
特に、勤続期間が短い会社員の移動率が目立ち、前年(39.2%)よりも3.1%ポイント上昇。
反面、10年以上勤続した社員は97.0%がそのまま席を守り、移動率が最も低かったです。
年齢別の離職率は?
2021年にはすべての年齢帯で離職率が増加しましたが、その中でも特に20~30代の1年未満の勤労者離職率が最も高かったことが分かりました。
上の「年齢別働き口移動率」の表を見てみましょう。
紫色で示されているのが「入職率」、オレンジ色で示されているのが「維持率」、緑色で示されているのが「離職率」となります。
年齢別推移を見ると、離職率は30歳未満(15~29歳)で20.9%と最も高い結果となりました。
その次は30代で15.9%。
40代(13.6%)・50代(14.2%)は相対的に離職率が低いことが分かりました。
若者の離職率が高い理由は?
産業構造が急速に変化する状況下に、COVID-19の拡散まで続き、未来を予測するのがさらに困難になったためという分析が出ています。
つまり、先行きの不安からより良い条件の職場を探すといった状況ですね。
転職せざるを得ない人生、物価も上がり不安定な生活の中で実質的な所得は副業を通じて稼ぐという認識も広がっています。
副業を行っている人を表す「Nジョブラー(N잡러)」という新造語まで誕生しているほど。。
副業を営む20~30代の世代は毎年増えていて、今年の3月には会社員の38.5%が「Nジョブラー(N잡러)」という調査結果まで出されました。
雇用の安定性が消えていく構造の中で、より厳格に未来に備えて準備しなければならないという若者たちの姿を表しているようですね。。
コロナ禍の回復も離職率に影響?
コロナ禍の回復をきっかけに転職を考える人も増えている模様。
どういう事かというと、キーワードはコロナ禍に浸透した「在宅勤務」です。
ある会社員の方は、『3年間在宅に慣れてきた今は満足しているが、再び全面出勤をするのが考えられなくて、実は新しい職場を調べている」と語りました。
韓国政府は2023年6月から新型コロナウイルス感染者の隔離義務を「勧告」に切り替えました。
これと共に、病院や薬局で使わなければならなかったマスクの着用も解除され、事実上コロナ以前に戻ったわけです。
この流れと共に、COVID-19期間在宅勤務を実施していた企業も続々とこの制度をなくす雰囲気に。
全面出勤に変わる企業が続々と多くなり、在宅勤務に慣れた社員たちの離脱の兆しが出ているというわけです。
特に、通勤時間が長くかかる社員たちは深刻な悩みに陥っているとのこと。
インクルートが5月に調査した結果によると、在宅勤務が縮小したり廃止されれば離職を考慮すると答えた比率は70%に達しました。
在宅勤務の有無が、就職と離職決定に影響を与えると答えた割合も半分を超えました。
コロナ渦によって、いかに在宅勤務が根付いたのかを表しているような数字ですね。
韓国の有名企業の離職率はどのくらい?
実際に韓国の有名企業の離職率はどの程度なのかを見てみましょう。
今回取り上げるのは、カカオです。
カカオというと前回記事の『韓国の就職事情を調査しました!(新卒編)』でもご紹介しましたが、「2023年大学生が選んだ最も働きたい企業」の2位に選ばれた人気企業!
女性回答者が最も好む企業にも選ばれました。
それだけの人気企業なら、そこまで離職率は高くなさそうな気がしますが、実際はどうなのでしょうか?
それでは見てみましょう。
2022年の自主離職率はここ最近では最も高い水準
人気企業であるカカオの2022年の自主離職率は10.7%で、ここ最近では最も高い水準となりました。
また、平均勤続年数もここ最近では最低値を記録し、4.3年となりました。
その理由として考えられているのが、やはり在宅勤務の終了。
カカオは本社を対象に今年3月から事務所出勤を優先する「オフィスファースト」を施行しました。
これに先立ち、昨年7月から約6ヶ月間、遠隔勤務優先制度を実験してきましたが、これを全面終了するという会社方針が伝えられ、社員の不満が大きかったと見られています。
それでも、韓国全体の離職率から見ると、人気企業ということもあって、低めではあるのかもしれませんね。
日本の離職率は?
ここまでは韓国の離職率を見てきましたが、そうすると気になるのは日本はどうなのかというところですよね。
比較をしやすいように、日本の離職率をここからはお伝えしたいと思います。
日本の新卒就職者の離職状況は?
新卒卒業者(2019年3月卒業者)の就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者が35.9%、新規大卒就職者が31.5%でした。
日本の年代別の離職率は?
2021年の年代別離職率は、下の表の通りです。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
19歳以下 | 33.6% | 36.0% |
20~24歳 | 24.2% | 26.9% |
25~29歳 | 15.9% | 17.9% |
30~34歳 | 11.0% | 14.7% |
35~39歳 | 8.8% | 12.1% |
40~44歳 | 6.0% | 10.6% |
45~49歳 | 5.0% | 10.9% |
50~54歳 | 5.1% | 10.0% |
55~59歳 | 6.0% | 7.8% |
60~64歳 | 13.3% | 10.4% |
65歳以上 | 10.1% | 7.2% |
日本では男女別の離職率データとなっていますが、やはり若年層の離職率は日本も高いですね。
韓国と比較してみると、30代以上では日本の方が離職率は低めのようですね。
韓国の転職実情は??
ここまでは韓国の離職率を見てきました。
ここからは会社を辞めて、転職準備中もしくは転職した人たちの実際の声を聞いていきたいと思います。
果たして、どんな調査結果となるのでしょうか。
早速見ていきましょう!
転職を考えている人はどのくらいいる?
市場調査専門企業であるエムブレイントレンドモニターが、全国の満19~59歳の会社員1,000人を対象に調査した結果によると、会社員の10人中6人(55.2%)が転職する意向を持っていることが分かりました。
また、「終身雇用」の概念も次第に薄まっており、職場での定年保障はもはや大きな意味がないという回答も全体回答者の46.3%となりました。
退職を考えている理由は複合的で、 職務に対するビジョン・成長の可能性に対する悩み等で退社を考える人もいれば、人生のリフレッシュや新しい跳躍のために退社を考えている人も少なくありませんでした。
特に20代で退職を考えている人の割合が66.4%と最も高く、相対的に若年層でも今まで生きてきた人生とは異なる、新しい人生を夢見て挑戦する人が増えている傾向となりました。
転職してお給料は増えた?
韓国の統計庁が発表した「2021年働き口移動統計結果」によると、2020~2021年に転職した会社員219.8万人を調査した結果、会社員の3人に1人(36.4%)は転職して給料が減ったことが分かりました。
転職して給料が減った割合は、年齢別では60歳以上が44.6%と最も高く、その次に50代(40.7%)、40代(36.9%)、30代(32.5%)、30代未満(30.7%)と続きました。
年齢が高くなるほど、前職場より給与が高い職場に転職するのは難しいという結果ですね。
給与の減少幅を見てみましょう。
25万ウォン未満 | 12.2% |
---|---|
50万ウォン以上~100万ウォン未満 | 7.2% |
25万ウォン以上~50万ウォン未満 | 6.8% |
100万ウォン以上~200万ウォン未満 | 5.3% |
200万ウォン以上 | 4.9% |
下がり幅は、25万ウォン未満が12.2%で最も多い結果ですね。
反面、2021年に転職して給料が増えた割合は前年対比3.3%増の62.5%。
30代未満(68.5%)で給与が増えた割合が最も高く、金額ベースで見ると25万ウォン未満の賃金増加が17.9%で最も多い結果となりました。
転職してキャリアアップはできた?
2020年の中小企業勤労者1,552万6千人の内、2021年も同じ職場で働き続けた人は1,025万人(66.0%)、他の中小企業に移った人は234万8千人(15.1%)でした。
大企業に移った人は40万9千人(2.6%)、非営利企業に移った人は18万6千人(1.2%)、未登録状態になった人は233万2千人(15.0%)。
この割合を見ると、中小企業で経験を積んだ後、大企業に転職するというケースはかなりレアケースであることが分かりますね。
ちなみに、中小企業から転職した人だけをもとに計算してみると、大企業に移った割合は11.1%でした。
そして、大企業勤労者の転職後の企業別割合を見てみると、大企業から大企業に転職した人の割合は37.1%。
中小企業に転職した割合は56.2%となりました。
もちろん、会社の規模だけを見てキャリアアップしたとは言えない部分はありますし、大企業での競争に疲れて中小企業に転職するという方もいるかとは思いますが、数字だけで見ると大企業に転職する割合は低いようですね。
転職活動期間はどのくらい必要?
就職・転職サイトであるジョブコリアが、この1年間で就職もしくは転職に成功した男女の会社員357人を対象に行った調査結果をお伝えしていきます。
キャリア職の会社員が転職に成功するまでには平均7ヵ月掛かったことが分かりました。
新卒の場合は平均6か月なので、新卒よりも活動期間は長いことになりますね。
転職活動で苦労した点は?
ジョブコリアが「転職活動をしながらどんな点が一番大変だったのか」も調査したところ、キャリア職の求職者たちは「志願できる募集を探すこと(60.4%)」が最も難しかったと回答しました。
なるほど、自分のキャリアを活かせる募集探すのに時間が掛かるという点が、新卒との活動期間の差になっているのかもしれませんね。
転職先への満足度は?
同じくジョブコリアの調査結果によると、ここ1年の間大変な求職活動を経て就職・転職したにもかかわらず、現在在職している会社に満足している人はそれほど多くないことが分かりました。
「就職または転職した職場に満足しているか」という質問には28.0%だけが「満足する方だ」と回答。
54.9%は「まだよく分からない」、残りの17.1%は「不満だ」と答える結果となりました。
しかも、就職または転職した職場に不満な人の大多数(93.4%)が、再び転職を計画していることも明らかに。
離職を敢行する時期としては「すでに離職を準備中」の会社員が52.6%で最も多い結果になりました。
その他は29.8%の会社員が「転職時期は決めていないが、良い機会が来ればいつでも転職する」を選択し、「1年働いた後に離職する」と答えた人は15.8%でした。
よく「石の上にも3年」とは言いましたが、会社を見切るスピードの速さには結構驚きですね。。
日本だと、あまりにも転職回数が多かったり、早期で離職をしていると、転職時に良くないイメージになりがちとも言いますが、韓国では日本ほどそういった認識が濃くないのかもしれませんね。
夏休みも転職準備に当てる人が多数
会社員の10人中、4人がこの夏休み期間中も転職準備をする計画だと明かしました。
「休暇に行く予定」と答えた回答者は27.4%で、「普段通り仕事をする」という回答者は26%。
なんと「転職準備をする」と答えた回答者が46.6%で最も高い割合なんです。
夏休み期間中に転職を準備する理由については、43.1%が「休暇よりも転職がもっと重要だから」と回答。
続けて23%は「休暇期間を利用して、余裕を持って転職する企業を探し応募するため」と答え、18.1%は「休暇期間中に面接を受けるため」と答えました。
「普段の職場生活の中だと、顔色を窺いながら転職準備をしないといけないから」という回答も14.1%となりました。
休暇期間に息抜きする暇もなく、転職活動に当てる人がこんなにも多いとは、やはり韓国社会は過酷だなと改めて思ってしまいました。。
【まとめ】韓国の転職事情を調査しました!(転職編)
今回は、韓国の転職事情を調査しましたが、いかがでしたでしょうか?
前回の新卒の就職事情に続き、韓国社会で生き抜いていく大変さを垣間見たように思いました。
韓国での就職や転職を考えている方に、今回の記事がぜひ役立つと嬉しいです☆
次回は、韓国の進学事情に迫っていきたいと思っているので、そちらもぜひお楽しみに~。