韓国の就職・転職事情を調査!(50代以上編)
韓国の50代以上の就職・転職事情を調査!
これまで6回に渡って、韓国の就職事情や転職事情をお届けしてきました。
今回は最後の回として、韓国の50代以上の就職・転職事情をお伝えしたいと思います。
なかなか50代以上の方で実際に韓国で働いてみたいと思っている方は少ないかとは思いますが、韓国での就職などを考えていなくても現在の韓国事情を知ることが出来るので、ぜひ今回の記事を参考により深く韓国を知ってもらえると嬉しいです。
それでは、50代以上編を早速見ていきましょう♪
韓国の50代・60代の雇用率は?
7月10日に韓国の統計庁が発表した「6月雇用動向」によると、50代の雇用率は78.8%、60代以上は47.1%でした。
ちなみに、60~64歳で見ると65.3%、65歳以上となると38.9%となっていることから65歳を過ぎると雇用率はぐっと落ち込むようです。
失業率は50代が1.7%、60代以上は2.2%となり、50代の失業率は全世代で最も低い数値となっています。
20代よりも、60代の雇用率の方が高い?!
6月の20代の雇用率は61.6%。
なんと、60~64歳の雇用率(65.3%)の方が20代よりも高い状況となっているんです。
そして、経済活動参加率も20代は65.7%でしたが、60~64歳は67.1%で、やはり60代前半の方が20代よりも高い結果となっています。
定年後の60代前半の方が雇用率が高いというのは、若い層の雇用難を如実に表しているようですね。
働きに出る60代の女性が増加!
60代前半の雇用率が20代よりも高い理由の一つとして挙げられのが、職場に出てお金を稼ぐ60代の女性が増えているから。
退職年齢以降も活発に働く「新老年層」が増加したうえに、経済活動に参加する女性が多くなって現れた現象とも言えます。
7月16日に統計庁が発表した経済活動人口調査マイクロデータによると、6月の60~69歳の女性就業者は昨年同月より14万5,000人(8.2%)増えた191万7,000人と集計されました。
同期間、60代女性のうち育児で経済活動に参加しなかった人は3万3,000人で、家事をするために働かなかった人は167万7,000人。
60代女性のうち就業者(191万7,000人)のほうが、育児や家事をしている人(171万人)より20万人以上多い結果となりました。
そしてこの差はますます広がっているとのこと。
これを示すように、6月の60歳以上の高齢層の経済活動参加率は48.2%で、関連統計が作成された1999年以来6月基準で最も高かったそうです。
また、同じく統計庁が発表した「高齢者の特性と意識変化」によると、65~74歳のうち59.6%が「働くこと」を希望すると答え、働く意思のある高齢層は10年前(47.7%)に比べて12ポイントほど増えているとのこと。
日本でも「生涯現役」という言葉の如く働き続ける高齢者が増えていますが、どうやら韓国でも同じ流れのようですね。
政府も高齢層の働き口増加に着手
1,000万人老人時代が迫っている韓国。
統計庁の推計などによると、今年は930万人ほどの韓国の高齢者人口は2027年には1,167万人まで増加すると予想されています。
このような現状もあり、韓国政府は現在88万人余りとなっている高齢者の働き口を、2027年には高齢者人口の10%水準である120万件に増やし、新規老年層となってくる「ベビーブーム世代」への働き口創出に向けて取り組むことを発表しました。
そしてOECDによると、韓国の55~64歳の就業者3人に1人(34.1%)は所得が低く雇用安定性が落ちる非正規職に従事しているとのこと。
ちなみに日本の高齢層非正規職従事者比率は22.8%で、OECD平均では7.5%でした。
つまり、韓国では多くの高齢層が長年勤続してきた職場を退職後、雇用の安定性が見込みにくい雇用現場へと追いやられているということになります。
ここは政府主導で、高齢層のための安定性のある雇用創出に尽力してほしいですね。
韓国の50~60代の定年時期は?
韓国も日本と同じく60歳での定年が義務化されています。
現在定年の延長が議論されたりしてはいますが、しかし現実には、高齢層人口が最も長く勤めた職場を辞めた平均年齢は49.4歳という驚きの数字が出てきました。
50歳手前で職場を辞めているとはびっくりですよね。
ちなみに男女別に見ると、男性は51.1歳・女性は47.8歳で、男性の方が相対的に遅く辞めているよう。
該当の職場で勤続した平均期間は15年7ヶ月で、男性は19年1ヵ月・女性は12年2ヵ月とこちらも男女差があるようです。
職場を辞めた理由としては、事業不振・操業中断・休業が30.2%で最も高く、勧告辞職・名誉退職・整理解雇(11.3%)を含めると、10人中4人以上が本人の意思とは関係なく職場を離れることを余儀なくされたという結果に。
女性の場合は、家族の世話をするため(26.6%)に退職する人の割合が最も多く、男性は会社の事情・女性は家族の事情で辞めるケースが多いようです。
50歳で生涯の職場だと思っていた会社を辞めざるを得なかったというAさんは『定年は60歳だというが、定年まで会社生活ができるというのは幸せな結末』とし、『周囲でも50歳頃まで通っていた職場を辞めて新しい出発をするケースが多い』と話しています。
つまり、規定上の定年が60歳であっても、一生で最も長く勤めた職場で直面する「現実の定年」は49歳ということ。
統計庁雇用統計課長は『初めて入社した会社を「生涯の職場」と考えるケースが多かった50~70代世代の実際の定年と勤続年数を垣間見ることができる統計で、女性の場合は出産・育児によるキャリア断絶の影響を受けている』と説明しました。
ただ、49歳で退職したからといってそれ以降働かないわけではありません。
先ほど、50代の6月の雇用率は78.8%とお伝えしましたが、この数字は生活するために次の職場を探す人が多いということも表しています。
50代以上の退職者が後悔していることとは?
現実の定年平均年齢が49.4歳とお伝えしましたが、そんな彼らが退職後最も後悔していることは何なのでしょうか?
それは、「財政管理」。
年金だけでは老後の生活を送るのが厳しい状況の中、十分に老後準備をしていなかったことを挙げる人が最も多い結果となりました。
財政管理に続き、2位となったのは「退職後の働き口準備」。
退職直後の所得空白期に備えた準備が十分でなかったという自責の念が現れた結果に。
老後の生活費創出のための手段として、働き口がそれだけ大切だということを表していますね。
退職前に副業などを始めて月給以外のお金を稼ぐ経験をあらかじめしておけばよかったと後悔する人も多いようです。
そして、「退職後の所得空白期をどのように過ごしたか」という質問に対しては「働き口を探した」が最も多い回答で、「退職金とこれまで集めた貯蓄資金および投資資金を活用した」と答えた人は2位となりました。
老後の雇用のためには人間関係も重要
後悔している事項として、人脈を挙げる人も多くいました。
家族や友人など感情的な交流ができる人間関係も重要ですが、老後の生活費を支える所得創出に直結する仕事と関連したネットワーク不足を嘆く人も多いようです。
他には健康面では、普段運動しなかったことを最も後悔しているという回答も多く、これらの回答は若い世代にとっても結構重みのある助言ですよね。
50代中年男性の社会孤立も深刻・・
上の項目で「長く勤めた職場を辞めた平均年齢が49.4歳」とお話ししましたが、50代は様々な変化に直面する年齢と言えます。
それは失職・退職以外にも、離婚・負債・家族との不和・老化の体感・老父母扶養に対する負担感・子供の独立・老後に対する不安など人生の各種危機とも言える問題たちです。
その中でも特に、一人暮らしをしている男性は自分の悩みを共有することが出来ず、一人で孤独に耐えるばっかりに社会から断絶されてしまうというケースが増えています。
最悪の場合、孤独死というケースもありますが、果たして孤独死する中高年男性が多い理由は何なのでしょうか。
保健福祉部が発表した「第1次孤独死予防基本計画」(2023~2027年)によると、韓国の単身世帯数は717万人でこのうち孤独死危険群は152万5,000人にも及ぶそうです。
単身世帯の21.3%を占める孤独死危険群に挙げられた人々の年代別比重を見てみると、40代は25.8%で、50代は33.9%。
40~50代を合わせると59.7%で半数をはるかに超えています。
しかも60代(30.2%)まで合わせると89.9%で、なんと約90%に達する結果に。
40~60代が孤独死高危険群とみなされていますが、特に男性にこの傾向が顕著に見られます。
保健福祉部の「2022年孤独死実態調査」によると、最近5年間に孤独死で死亡した人は男性が84.2%で、女性より5倍も多く、このうち40~60代の中高年層が58.6%で半分以上を占めています。
60代(29%)まで考慮すれば87.6%に達するとのことで、40~60代は孤独死高危険群であるだけでなく、実際に最も多く孤独死する年齢帯でもあるわけです。
中高年の男性が孤独を感じる理由は?
単身世帯の中高年層(40~60代)は、経済面を最も厳しい問題として挙げています。
これに対し、保険福祉部は「健康管理と家事労働に慣れていない中高年層が失業・離婚などによって、生活満足度が急激に下がり影響を与えているようだ」と分析。
仁荷大学社会福祉学科のファン教授は『(中高年)男性の場合、職場生活をやめると社会的関係が消えてしまうが、このように社会と断絶され孤立することで、色々な問題が派生して現れ始める』と説明しました。
中高年男性の社会的孤立は、彼らの特性とも関連があるようで、ファン教授は『社会と断絶された時、唯一そばにいてくれるのが家族だが、経済的な問題もあるので酒でこれを解消しようとする人が多い。
そのため、家族との葛藤が激しくなって、家族がバラバラになってしまうケースが非常に多い』と続けました。
また、自尊心が強いという特性のために『人に会って助けを求めなければならない時期なのに、人々との関係を遮断するようになるという特徴もある』と語っています。
こういった孤立感を少しでも緩和するためには、やはり「社会とのつながり」が不可欠。
そして、この社会とのつながりとはやはり「仕事」なんです。
仮になかなか次の職場が見つからないという場合も「決まった時間に起きて、行く場所を作っておくことが重要」とのこと。
つまり、ふさぎ込まずに人々と少しでも交流できる余地を残しておかなければならないというわけです。
なによりも重要なのは、社会性だけは断絶したり途切れないことで、ボランティア活動なども効果的だそう。
高齢層と言ってもまだまだ先の長い人生、精神面での健康にも目一杯気を配ってほしいですね。
韓国の50代・60代の転職率は?
韓国の統計庁が発表した「2021年働き口移動統計」によると、50代の転職率は14.2%、60代以上の転職率は14.7%となりました。
ちなみに、上の表で紫色で示されているのが「入職率」、オレンジ色で示されているのが「維持率」、緑色で示されているのが「転職率」です。
60代以上の入職率が16.4%と高めの数字になっていますが、これは上の項目でも挙げたように経済活動に参加する60代の女性が増えたことが一因かもしれませんね。
73歳まで働きたい!
高齢層の方は、平均73歳まで働くことを望んでいるとのこと!
この継続勤労希望年齢は年齢が上がるほど上昇傾向で、65~69歳の場合は75歳まで、70~74歳は78歳まで、75~79歳は82歳まで働きたいと答えています。
働く高齢層の割合が歴代最高を記録している韓国ですが、それは老後保障が足りない状況下で生活費を稼ぐために「労働戦線」に追い込まれている人がそれだけ多いという意味。
高齢層の半分以上(55.8%)は勤労希望理由として「生活費のため」と回答しています。
「働くのが楽しい(35.6%)」、「健康維持のため(2.1%)」という回答比率と比べると、やはり生活の為という回答が圧倒的に多いようです。
年金だけでは足りない・・
高齢層(55~79歳)のうち、10人中5人程度だけが年金を受け取っており、しかも平均年金受給額は75万ウォンに止まることが分かりました。
75万ウォンというと、日本円で8万円くらいですね(2023年8月現在のレート換算)。
平均すると75万ウォンですが、実際の比率は50万~100万ウォン未満が30.2%、150万ウォン以上は12.2%。
そして、年金を受け取っている高齢層の半分近く(44.6%)は、受領額が50万ウォン未満であることも明らかに。
物価がどんどん上がっている中、さすがに年金だけでは生活できないのは明白ですよね。。
この年金受給額は、今年の最低賃金の月換算額(191万4440ウォン・209時間基準)を下回るだけでなく、高齢層が最も多く希望する月平均賃金水準(200万~250万ウォン)とも大きく差がある結果にもなりました。
どんな働き口があるの?
高齢層はどんな業種に従事しているのでしょうか?
統計庁が発表した「2023年5月高齢層付加調査結果」によると、55歳~79歳の高齢層が最も多く従事している業種は「農林漁業(13.1%)」であることが分かりました。
その次に続いたのが「福祉(11.9%)」と「製造業(11.8%)」。
逆に、従事比率が低いものとしては「芸術・スポーツ・レジャー(1.2%)」、「金融・保険業(1.9%)」、「専門技術のサービス業(2.2%)」などとなりました。
【まとめ】韓国の就職・転職事情を調査!(50代以上編)
今回は、韓国の50代・60代の就職・転職事情を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
日本同様、老後のためには働き続けないと生活していけないという韓国の実情が見えましたね。
韓国の就職・転職事情シリーズは今回で終了しますが、これからも韓国の社会事情を引き続き追っていきたいと思います!