韓国の就職・転職事情を調査!(40代編)
韓国の40代の就職・転職事情を調査!
2回に渡って、韓国の20代と30代の就職・転職事情をお届けしてきました。
今回は、『40代編』をお届けしたいと思います。
40代というと、会社でも役職が付くなど責任のある立場になったり、子供たちもある程度大きくなって教育費への支出が増えたりと20代・30代とはまた違った背景があると言える世代。
今回は韓国の40代ならではの就職・転職事情を深掘りしていきます。
まずはその前に、韓国の40代をよりよく知るために、彼らを取り巻く生活・労働環境を見てみましょう!
大企業では40代の役職者が増加傾向
大企業の役員年齢はどんどん若返っています。
最近では、サムソンSDIの副社長に40代の女性が抜擢されたというニュースも話題に。
ジョブコリアが2021年に行った調査結果によると、時価総額上位30社の2020年事業報告書で公開された登記・未登記役員計3,119人の年齢と学歴などを分析した結果、40代の役員が21.6%を占めることが分かりました。
つまり、役員の5人中1人以上が40代ということです。
これらの大企業役員の平均年齢は満53歳で、依然として年代別では「50代役員」が大部分(73.3%)ではありますが、50代に次いで2番目に多かったのが40代となりました。
「デジタルに慣れている若い世代の役員」が大企業でも期待されているということですね。
ちなみに、大企業の役員の特徴として、海外で学位を取得した留学派が多いということも挙げられます。
大企業役員の「最終学歴」を調査した結果、4人中約1人に達する24.3%が「海外」で学業を終えたことが分かりました。
韓国国内の大学で見ると、大企業の役員を最も多く輩出した学校は「ソウル大学(14.5%)」でした。
続いて、延世(ヨンセ)大学が9.3%、高麗(コリョ)大学が8.5%となり、やはりSKY大学(ソウル大・高麗大・延世大の頭文字を取った略語)が上位を占めるわけですね。
SKY大学を目指す学生が多いのも納得です。。
役職者が増える世代という事で、40代は社会的責任の度合いが一層高くなる世代とも言えますね。
韓国の40代夫婦の切実な悩みとは・・
ここからは、韓国の40代の生活面を見てみましょう。
韓国の40代夫婦の切実な悩み、それは子供たちの教育費を支出しながら、自分たちの老後の準備も行わなくてはならないということ。
例えば、40代半ばのAさんは老後の準備に頭を悩ませています。
Aさんの家庭は、子供たちの世話をするために会社を退職した妻と、小学生の子供2人の4人家族。
Aさんの所得は上がっていて生活自体は維持できていますが、引退後の準備がまともにできていない状態です。
というのも、2人の子供の養育費と教育費は果てしなく上がっており、さらには住宅ローンまで返済しているので、貯蓄はかなり厳しい状況。
妻となんとかして毎月50万~60万ウォンくらいは貯蓄をしてみようと話しているそうですが、現実は手一杯。
退職後は、特に所得がない見通しなので、今後30~40年を持ちこたえられるのか見当もつかないそうです。
だからといって必要なところだけにお金を使っているため、支出を大幅に減らすこともできず、Aさん夫婦は一体どうしたら良いのかと悩んでいるそう。
これは、韓国の40代夫婦の多くが抱えている悩み。
韓国の金融監督院関係者は40~50代は多くの費用を使うこともありますが、今が生涯で最大黒字を作り出すことができる時期であるので老後準備を着実にしなければならないと助言しています。
特に、子供の養育費と教育費を適切に統制できないと、老後資金の調達はおろか生活の営み自体が難しくなりかねないと警鐘を鳴らしているので、40代~50代にとっては深刻です。
子供の教育費はどのくらい?
韓国の親たちは子供の塾費として、月平均で最大57万ウォンを使っていることが分かりました。
これは、サムソン金融ネットワークモニモが、30~50代の自社会員がサムソンカードで昨年決済した塾の平均決済額を調査したものです。
ちなみに、月平均額は50代が57万ウォンで最も高く、続いて40代が月平均49万ウォン、30代が36万ウォンの順となりました。
年齢帯が高いほど子供の教育に投資する金額が高いと分析されていますが、カード業界関係者は『成人1人が平均4枚のカードを持っており、両親が複数枚のカードで塾代を決済する場合があるだろう。
そうすると、実際には月平均の塾代は100万~200万ウォンに達するものと見られる』とも話しています。
40代の月平均49万円は日本円にすると、ざっくり5万円くらい。
毎月塾代だけで、これだけの出費があると、家計的にはかなり厳しそう。
しかも現実には100~200万ウォンも掛かっているとしたら、相当生活を切り詰めないとやっていけないですよね。
韓国の40代の雇用率は?
7月10日に韓国の統計庁が発表した「6月雇用動向」によると、40代の雇用率は79.2%でした。
同月の20代の雇用率は61.6%、30代の雇用率は79.0%、全体の雇用率が63.5%だったので、20代や全体と比べると、40代の雇用率はかなり高めとなっています。
失業率を見てみると2.1%で、全体の失業率2.7%とよりも低い数字となっています。
40代の失業率も20代(6.3%)と比較すると、かなり低い数字と言えますね。
40代に雇用危機??
雇用率は相対的に高かった40代ですが、実は20代と共に、雇用市場で冷たい風にさらされている世代と最近言われているんです。
それは全体で見ると、就業者数は増加傾向にありますが、40代だけで見てみると12か月連続で就業者が減り続けているから。
しかも、減少した40代就業者の大半は男性なんです。
40代の女性就業者は増加と減少を繰り返しながらも似た水準を維持していますが、男性就業者は持続的に大幅に減少しています。
一体何が起こっているのでしょうか?!
その理由として挙げられているのは、半導体の景気低迷と輸出不振にともなう製造業の不況のため。
統計庁では、これらの業種に多く従事している40代の男性がその影響をもろに受けていると分析しています。
この実情は雇用博覧会でも垣間見えるようで、雇用博覧会を訪れた40代の求職者には『製造業で働いていたが、会社が廃業した』や『日雇いの職を探したいが、日雇いも人員が大幅に縮小されている』など嘆きの声を挙げる人も多いようです。
ちなみに、韓国の40代雇用率はOECD国家中31位で下位圏。
家庭の大黒柱とも言える40代の男性が抱えている責任感等を考えると、40代男性の雇用状況がなんとか改善することを祈りたいですね。
定年もそろそろ念頭に・・
40代の会社員は定年まで現在の職場で働けるかに関して、3人に1人が不安を持っていることが分かりました。
ソウル市50プラス財団がソウルに居住する40代の賃金勤労者と非賃金勤労者1,189人を対象に行った調査によると、33.9%に当たる403人は「定年まで働きたいけれど、長く勤める自信がない」と答えたそうです。
逆に、「現在の職場で定年まで仕事ができる」と自信を持って答えたのは33.8%に当たる402人で、「定年と関係なく好きなだけ働ける」という回答をした69人(5.8%)と合わせても40%にも満たない結果となりました。
調査によると、現在の職場で働けると期待する期間は10年以上が34.0%で最も多い結果に。
続いて、5年以上10年未満が28.1%、2年以上5年未満が22.7%、1年以上2年未満が10.3%、1年未満が4.9%となりました。
韓国の40代の転職率は?
ここからは、韓国の40代の転職事情を見ていきます。
韓国の統計庁が発表した「2021年働き口移動統計」によると、40代の転職率は13.6%で、全ての年代で転職率は最も低い結果となりました。
それを表すように、働き口の維持率が75.9%と全ての世代で最も高い水準になっていますね。
ちなみに、上の表で紫色で示されているのが「入職率」、オレンジ色で示されているのが「維持率」、緑色で示されているのが「転職率」です。
やはり、家庭の大黒柱である40代は生計を維持しないといけない等の責任感もあるため、転職には他の世代よりも慎重なのかもしれません。
40代が職場で重視するものは?
ソウルで働く40代の80%以上は、職場において「雇用の安定性」と「勤労所得」を最も重要視しているようです。
自身が重視する価値について質問したところ、37.7%が雇用の安定性を、32.8%が勤労所得を挙げ、雇用の安定性が僅かに高い結果となりました。
その次に挙がったのは「勤務環境」でしたが、9.4%に過ぎず、上位2つの答えとは圧倒的な開きを見せました。
職を失う事ことへの不安感が最も大きい40代
統計庁が行った「2019年社会調査結果」によると、全体の就業者の59.1%は失業や離職に対して不安感を感じていると回答。
そして、年齢別では40代が最も失業や離職に対して不安感を感じているということも分かりました。
最新のデータがないかと2022年の社会調査結果も確認しましたが、同設問がなかったため、今回は2019年の調査結果をもとにお伝えします。
不安を感じていると答えた割合は40代が63.0%、30代が60.2%、20代が60.1%、50代が58.6%、60代以上が51.6%となりました。
性別では男性が59.7%、女性が58.2%で男性の方が高く、業種別では労務職やサービス・販売職の不安感が高く現れた結果に。
日本では40~50代の中年期に、急に焦燥感や心の葛藤などが現れることを「中年の危機」や「ミッドライフ・クライシス」とも言いますが、韓国の40代も同様なのかもしれませんね。
老後も働きたいなら40代で転職が必要!?
ジョブコリアが男女の会社員532人を対象に「老後の雇用計画」についてアンケート調査を行った結果、全体回答者の10人中約7人に達する67.3%が「定年退職以後、老後も職場生活を継続したい」と答えました。
しかし、「現実を考慮した時、何歳まで職場生活ができそうか?」という問いに対しては、会社員たちは「平均55歳まで職場生活ができるだろう」と主観的な意見として回答し、法定定年(60歳)を約5年も下回る水準でした。
そのため、会社員の相当数は法定定年前に所得が低くなっても老後も働き続けられる職場への転職を悩んでいることが明らかに。
「定年前に老後まで働き続けられる職場に転職する考えはあるか?」という質問に対しては、全体回答者の10人中8人に達する77.3%が「ある」と答えました。
そして、会社員たちは老後まで働き続けられる職場への転職は40代に準備しなければならないとも回答。
「老後も引き続き働ける働き口はいつ準備した方が良いか」の調査に関しては「40代後半(45~49歳)」を挙げた会社員が25.5%で最も多い結果となりました。
続いて「40代前半(40~44歳)」が適切だという回答者が23.6%。
40代のうちの転職を挙げている人が大半を占める結果に。
反面「老後の働き口は定年退職後に探した方が良い」という会社員は18.0%と少なく、老後の準備は40代からスタートすべきという認識の方が多いようです。
自営業よりかは転職
ジョブコリアが40代の男女会社員448人を対象に「40代以降の職業」についてアンケート調査を行いました。
『現在の職場を退社するならば「転職」と「創業」どちらにするか?』 という問いに対して、40代の会社員の意見は分かれることに。
新しい職場を探して「転職する」と答えた会社員は過半数を少し越えた54.2%で、「創業する(45.8%)」と答えた会社員より多い結果となりました。
実際、職場を退社するならば転職すると答えた40代の会社員10人中7人(70.4%)は「転職のために現在準備中」と回答。
現在準備していることとしては「キャリア職の採用公告を随時検索している」という回答が32.7%で最も多く、その次に「自身の評価を落とさないために、職場での対人関係を管理している(29.8%)」「職務分野の資格取得を準備している(27.5%)」などがありました。
職場での対人関係の管理というと、首をかしげる方もいるかと思いますが、実際にキャリア職の社員採用時に前職場に、その社員の評価を照会をするという企業が相当数に至るそうなんです。
ジョブコリアが企業の人事担当者378人を対象に調査した結果でも、39.9%の企業がキャリア職採用検討者の評価照会をすると答えたほど。
そして、職場を退社するならば創業すると答えた40代会社員の中でも「現在創業準備をしている」と答えた人は81.5%にのぼりました。
彼らが現在準備しているものとしては「創業アイテムを探している」という答えが複数回答応答率49.1%で最も多く、 続けて「創業資本金を集めている」と答えた人が応答率42.5%となりました。
ちなみに、創業を計画する時期としては40代後半から50代前半が最も多いようです。
老後への備えをスタートしなくてはならない40代
老後というと20~30代にとっては、まだまだ遠く感じられる概念。
社会人1年生たちは明日の出勤を皮切りに恋愛・結婚・子育てという巨大な壁も越えていない状況で、引退に備えるべきだということは実感できないのも当然かと思います。
新韓銀行が昨年発表した「2022年 一般人金融報告書」によると、20~64才の経済活動者は引退後に余裕のある生活をするためには、41.5才から引退・老後準備を始めなければならないと呼びかけています。
しかし、実際には引退・老後のための財務準備ができている40代は15.3%に過ぎないというのが現実。
40代の引退・老後を準備する余力が足りない理由としては、成長期の子供の養育のためと同時に、両親の老後に責任を負うためであることも明らかになっています。
【まとめ】韓国の就職・転職事情を調査!(40代編)
今回は韓国の40代の就職・転職事情を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
40代に入ると、多くの責任感や負担がのしかかってくることが分かりましたね。
苦悩する韓国の40代の姿が垣間見えたようにも思います。
次回は50代以上編をお届けするので、お楽しみに~♪