韓国の進学事情を調査しました!(お受験編)
韓国の進学事情を調査!
これまで2回に渡って、韓国の新卒就職事情と転職事情をお届けしてきました。
そこで今回は、韓国の進学事情に迫ってみたいと思います!
韓国というと「受験戦争が熾烈」というイメージがありますよね。
徹底した超学歴社会であるため、大学への進学率は高そうというイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?
今回は、大学・大学院への進学事情を深掘りしていきます。
それでは、早速見ていきましょう♪
今年の大学修学能力試験(수능・スヌン)はいつ?
今年の「수능・スヌン」は11月16日(木)。
ちなみに、韓国では大学就学能力試験のことを「수능・スヌン」と呼びます。
正式には、대학수학능력시험(テハㇰ スハㇰ ヌンニョㇰ シホㇺ)ですが、略して「수능・スヌン」と呼ぶのが一般的です。
日本の大学入学共通テストは1月に実施されているので、日本よりかは早めですね。
受験生は9月の模擬評価試験に向けて深い悩みに陥り中・・
模擬評価試験こと「모평・モッピョン」は受験生が最も神経を尖らせる模擬試験です。
スヌンの練習をする意味で毎年6月と9月に実施されている模擬試験で、その年のスヌンの難易度や傾向を予測できる試験でもあります。
6月の「모평・モッピョン」が終わり、この試験内容をベースに受験生たちは9月に向けて傾向と対策を練り直すというのが従来の流れですが、今年の受験生は今、深い悩みに陥っています。
それは、尹(ユン)大統領が大学修学能力試験の試験難易度に関して指摘をした後、政府が私教育費軽減方案としてスヌンでのいわゆる「キラー問題(超高難度問題)」排除を発表したからです。
ちなみにこの発表がなされたのは、6月のモッピョンの後で、6月のモッピョンではこれまで通りキラー問題が出題されました。
なぜキラー問題排除が発表されたかというと、これまでスヌンでは公教育の範囲を外れた大学教授も解けないほどの背景知識を要求する「キラー問題」が出題されてきており、このような問題に備えるために私教育競争が激しくなっているのが問題だという理由。
力があったり、お金のある人だけが私教育を通じてキラー問題を解く助けを受けるのは不公正であり、不適切だということで「公正なスヌン」のために実施されることとなりました。
良い動きのようにも思いますが、スヌンを約5カ月後に控えた時点で難易度の変化が言及され、受験生や保護者の間では混乱が広がっています。
キラー問題が排除された後の試験全体の難易度や、試験問題の傾向を今は推測するしかない状況の為、まずは9月のモッピョンを実際にやってみて傾向を掴むしかない状況のよう。
スヌンで人生が決まるとも言われている韓国社会。
受験生にとっては、突然の難易度の変更はパニックに陥るしかない状況ですよね。。
韓国の大学進学率を調査!
ここからは、韓国の大学進学率を探っていきたいと思います。
調査を進めると、色々な背景が見えてきたので、早速見てみましょう。
2022年の韓国の大学進学率は73.3%
韓国の高校卒業生の大学進学率は、2022年は73.3%でした。
日本の場合は、2022年度の大学進学率は過去最高の56.6%だったので、日本よりも韓国の方が大学進学率は高い結果となりました。
過去の韓国の大学進学率も見てみると、1980年の23.7%から1985年は36.4%、1995年は51.4%、2000年は68.0%、2005年は82.1%と急激に増加し、2008年には83.5%で歴代最高の進学率となりました。
その後は下落傾向となり、 2017年には68.9%まで下がったものの、2022年は73.3%となりました。
大学進学率に地域格差あり
大学進学率は地域間格差が激しいことも分かりました。
鐘路学院ハヌル教育が発表した資料によると、市道別の進学率は首都圏であるソウル・京畿道・仁川地域が全国平均よりも相対的に低いことが分かりました。
なんとここ20年間で見ると、首都圏地域の大学進学率は全国平均と比べて最大16%程度も低かったとのこと。
日本の場合は、2022年度で見ると首都である東京の大学進学率が76.8%で最も高かったので、日本とは真逆の数字ですね。
どうして韓国は、首都圏の大学進学率が低いのでしょうか?
その鍵となる数字があるので、下のトピックで更に探ってみましょう!
江南地区の大学進学率が全国最下位水準!?
なんとソウルの瑞草区(ソッチョ)・江南区の高校の2021年大学進学率が全国最下位水準である50%台だったと言うんです!
瑞草区・江南区というと、松坡区(ソンパ)と合わせて「江南3区」とも呼ばれる韓国でも屈指のスーパーお受験エリア。
見渡す限り、塾・塾と言った感じで、子供の教育に力を入れるためにわざわざ引っ越してくる人もいるほどのエリアです。
それなのに、瑞草区・江南区の大学進学率が全国最下位水準とはどういうことなのでしょうか。
「理解できない」と思った方も多いと思いますが、その理由は江南地域の学生はソウルの上位圏の大学進学を狙っているため、スヌンの結果が良くなかった場合、中下位圏大学に入学するのではなく、上位圏の大学・学科に行くために浪人を選択することが多いからだと分析されています。
実際に、2021年の江南区と瑞草区の高校生の短期大学進学率はそれぞれ7.2%と8.2%で、ソウルの平均16.7%の半分にも満たなかったそう。
ちなみに、2021年のソウル25区の区別大学進学率を見ると、瑞草区と江南区はそれぞれ55.2%と56.4%で、ソウル25区の中でも最も低い水準でした。
反面、衿川区(クㇺチョン)は73.8%を記録して最も高く、その次に城北区(ソンブㇰ)が72.1%、道峰区(トボン)が71.7%、中浪区(チュンナン)が71.6%と続きました。
衿川区や城北区などの高校生は10人中7人以上が大学に入学しましたが、瑞草区・江南区は高校生の半分程度だけが大学に進学したわけですね。
ソウル所在大学は浪人生の割合が増加
2022年度のソウル所在大学への入学生中、3人に1人が浪人生でした。
1982年度当時の統計では、全大学入学者19万7,236人のうち浪人生が5万7,902人(29.4%)、ソウル所在大学に限ると、浪人生の割合は24.0%でした。
しかし、その後ソウル所在大学に入学する浪人生の比率は上昇傾向に。
2000年度の全大学入学者のうち浪人生の割合は20.4%でしたが、ソウル所在大学に関しては全入学者7万5,650人のうち2万5,484人が浪人生。
浪人生が全体の33.7%を占め、全大学との差は13.3%pにもなりました。
2022年度の数字を詳しく見てみると、全大学入学者のうち浪人生の比率は24.9%、ソウル所在大学は34.5%で、ソウル所在大学入学者のうち3人に1人は浪人生。
前年度(2021学年度)と比べると、ソウル所在大学の浪人率は0.8%p減少しましたが、全大学の割合との差は9.6%pでそのままでした。
どうしてソウルの大学は浪人生の割合が高い?
浪人生は、現役生に比べてソウル所在の大学を志願する比率が高いことが分かりました。
2010年度には現役生の30.5%がソウル所在大学に入学志願をしましたが、浪人生は51.2%が志願しています。
2020年度・2022年度も浪人生の半分以上が、ソウル所在大学を志願しました。
ちなみに、浪人生たちは現役当時はスヌン等級が2~4等級の中上位圏の生徒が大部分だそう(スヌン等級は上位の1等級から9等級まであります) 。
なるほど、上を狙える成績だからこそ、ソウル所在のもっとレベルの高い大学を目指そうと思うわけですね。
これが、ソウル所在大学の浪人生の比率が全国の割合より高い原因と分析されています。
そして最近は、「半修生(반수생)」の増加もトレンドになっているようです。
半修生とは、人気の高いソウル所在の主要大学や医薬系統の大学に進学するために大学に合格しても、もう一度スヌンを受ける学生のことを言います。
なんと、半修生も約6万~7万人いると推定されているというから驚きですね。
大学院への進学率は?
それでは、大学院への進学率はどうなのでしょうか?
大学への進学率同様、高い水準なのか気になるところですね。
アメリカのカンザス大学社会学科のキム・チャンファン教授が発表した論文「家族の社会経済的背景と大学院進学確率の性別格差」によると、2010~2018年の4年制大学卒業者の中で大学院に進学した比率は13.5%でした。
男女別に見ると、男性は14.7%、女性は12.2%。
ちなみに、日本の大学院進学率は2020年度で男性14.2%、女性は5.6%なのでやはり日本よりは大学院進学率も高めと言えますね。
親の所得が大学院進学率に影響!?
同じく、キム・チャンファン教授の論文によると、親の所得が少ないほど女性大学卒業者の大学院進学率は、同じ背景の男性より低いことが分かりました。
親の所得が下位10%の場合、男性の大学院進学率は13.5%、女性は11.2%となり、男女格差は2.4%ポイントになりました。
しかしそれに対して、親の所得が上位10%の家庭では男性の大学院進学率は14.9%、女性は13.8%で格差が1.1ポイントまで縮まる結果に。
キム教授は「女性の大学院進学率は、男性の場合よりも家庭の所得など階層格差に敏感だ」と分析しています。
そして、大学院進学率には地域格差もあるんです。
高校の所在地別に見てみると、ソウルの高校卒業者の大学院進学率が16.0%で最も高く、全羅道地域の高校卒業者の進学率は12.0%で最も低いことが分かりました。
特に、ソウルの中でも江南3区(江南区・瑞草区・松波区)の高校卒業者は、大学院進学率が18.4%で、他のソウル地域より高めでした。
親の教育水準も子供の大学院進学に影響を及ぼすようで、両親が専門学校や短大卒以下の場合と比べると、両親が大学院を卒業した場合は子供の大学院進学率も2.5倍近く高い結果となりました。
就職のために大学院に行くケースも
アルバイト専門ポータルサイトである「アルバ天国」が20代の大学生748人および就職準備生168人を対象に、2022年2月に「大学院進学」に関する調査を行った結果、大学生の相当数が大学院進学を計画中であり、その背景には「就職」があることが分かりました。
なんと、全回答者のうち63.0%は大学院進学を考慮したことがあると答えたというから驚き。
学年別に見てみると、1年生で55.5%、2年生で62.9%、3年生で74.4%、4年生で77.9%と就職時期が近づく高学年ほど高い割合を示していました。
日本だと、さすがにここまで多い比率で大学院進学を考えてはいないですよね。
調査によると、全体回答者の72.4%が大学院進学に対して肯定的と答えました。
理由(複数回答可能)としては「今後の就職およびキャリアに役立ちそうだから」が79.9%で最も多く、「修士号を取得したら、就職時の年俸などの条件が有利になりそうだから」が66.8%で2位。
やはり、就職に関する理由が最も多い結果となりました。
なんとなく大学院に進むと言うと、専門分野をもっと突き詰めたいという理由が1位なのかなと思いましたが、「学問をより深く研究することができるから」と答えたのは56.0%。
その他には、「人的ネットワークを構築することができる」が28.5%、「大学院でのみ活用可能なハード・プログラムなどを経験できる」が19.9%でした。
一方で大学院への進学を否定的に見る人もいて、理由(複数回答可能)としては
「社会に進出する時期を遅らせようとしているから(68.0%)」
「大学院進学が必ずしも就職・未来に役立つとは限らないから(59.7%)」
「大学院の高い学資金が負担(53.0%)」
「就職難から逃避して進学するみたいだから(29.6%)」
などがありました。
実際に大学院進学を計画している人はどのくらい?
同じく「アルバ天国」の調査によると、「実際に大学院進学を計画している」と答えた回答者の割合は49.7%でした。
比較的、低学年の1・2年生(47.1%)よりも卒業を控えた3・4年生が54.7%と高い回答率を示しました。
彼らが大学院に進学しようとする理由(複数回答可能)もやはり「就職」。
大学院進学を計画している理由の1位は「今後の就職およびキャリアの発展に助けを得ようと思って」が57.0%で最も多い結果となりました。
その他にも、就職に関連する理由としては、
「より高い学歴が就職に有利だと思って(50.3%)」
「希望する業職種就職のためには大学院進学が必須あるいは役に立つから(41.1%)」
「今後就職したい業職種関連の人脈を築くため(23.9%)」
「就職後に職務と関連した理論を勉強する予定なので(20.2%)」
「大学卒学歴では就職できないから(19%)」
などが続きました。
ちなみに、「大学院の学資金はどうするか」の質問に関しては、「大学時代にアルバイトなどで予めまとまったお金を用意する計画」と答えた人が45.7%に。
続いて「両親など家族の支援(28.2%)」「学資金融資(17.7%)」などとなりました。
金銭面でも自力で大学院に行こうと考えている人が多いのは、素晴らしいですね。
【まとめ】韓国の進学事情を調査しました!(お受験編)
今回、韓国の進学事情を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
やはり、超学歴社会と言われるだけあって、大学進学率・大学院進学率ともに日本より高い水準となっていましたね。
受験生はスヌンへの悩み、大学生になったら今度は就職への悩みと若い世代の葛藤は終わりが無いようにも見えました。。
次回からは、更に世代別に韓国の就職事情や転職事情を掘り下げていくのでお楽しみに~!