韓国のアイスアメリカーノ信仰がすごい!冬でも氷入り?

韓国旅行でカフェに立ち寄ると必ず目にするのが、アイスアメリカーノ。
なんと韓国では、真冬の氷点下でも氷入りのアメリカーノを片手に歩く人の姿は当たり前の光景です。
一体なぜ、韓国人はここまでアイスアメリカーノを愛するのでしょうか?
そこには、カフェ文化の急成長や伝統的な考え方、そして若者の自己表現が重なった深い理由が隠れているんです。
この記事では、韓国の「アイスアメリカーノ信仰」を、文化や歴史の視点からひも解いていきます。
韓国でアメリカーノが人気になった理由

引用元:https://www.seoul.co.kr/
韓国でアイスアメリカーノが定番化したのは、単なる流行ではなく、社会や文化の流れと深く結びついています。
1980年代まで、韓国で主流だったのはインスタントの「ミックスコーヒー」でした。
砂糖とミルクがたっぷり入った甘い味が定番で、職場や家庭で手軽に飲まれてきたのです。
ところが、1990年代以降に、ソウルへ「スターバックス」や、国内チェーン「EDIYA COFFEE」などが続々登場し、カフェ文化が一気に広まりました。
当時、韓国にはまだエスプレッソ文化は浸透していなかったため、「苦すぎず、すっきり飲める」アメリカーノが、学生やビジネスマンにとってちょうどいい存在だったのです。
砂糖やミルクを加えないブラックスタイルは、「大人っぽい」「スマート」というイメージと結びつきました。
また、韓国に多い長時間の受験勉強や残業続きのライフスタイルも、量が多くカフェインをしっかり摂れるアメリカーノの人気を後押ししました。
そして文化的な追い風となったのが、2011年にインディーズデュオ 、「10CM」 が発表した楽曲『Americano』です。
ユーモラスにアメリカーノを歌い上げたこの曲は、メジャー系音楽配信チャートで1位を独占するなど、国民的な大ヒットとなり、「アメリカーノ=都会的でおしゃれな飲み物」というイメージを一気に強化しました。
こうしてアメリカーノは、単なる飲み物を超え、韓国人の日常や大衆文化そのものに組み込まれていったのです。
韓国人が冬でもアイスアメリカーノを選ぶ理由

引用元:https://www.wikitree.co.kr/
氷点下の真冬でも、厚手のコートに身を包んだ韓国の若者が手にしているのはホットコーヒーではなく、氷がたっぷり入ったアイスアメリカーノ。
旅行者からすると「なんでこんなに寒いのに?」と不思議に思う光景ですが、実はそこには韓国ならではの思想や文化的背景が隠れています。
ここでは、韓国人が冬でも迷わずアイスアメリカーノを選ぶ理由をみていきましょう。
「以冷治冷(이냉치냉)」の思想
韓国には昔から「以熱治熱(熱を熱で治す)」と「以冷治冷(冷を冷で治す)」という二つの養生思想があります。
暑い夏に熱々の参鶏湯を食べて体を整えるのが「以熱治熱」、寒い冬にあえて冷たい飲み物を口にするのが「以冷治冷」です。
こうした考え方は東洋医学の陰陽思想ともつながっており、単なる民間習慣ではなく、長い歴史の中で生活に根付いてきた知恵とも言えます。
そのため、冬にアイスアメリカーノを飲むのは「冷気を冷気で制する」という理屈に合っており、韓国人にとっては自然な選択肢のようです。
旅行者から見ると「なぜ真冬に?」と驚く光景ですが、韓国人にとっては理にかなった行動なんですね。
「얼죽아(オルジュガ)」現象
韓国でアイスアメリカーノ文化を語る上で欠かせないキーワードが、「얼죽아(オルジュガ)」 です。
これは 「얼어 죽어도 아이스 아메리카노(凍え死んでもアイスアメリカーノ)」 の略語で、たとえ真冬の氷点下でもアイスを選ぶ若者の姿を象徴する表現です。
このキーワードはSNSやドラマでも頻繁に取り上げられるようになり、「若者らしさ」を表すライフスタイル的な言葉として浸透しました。
冬になるとインスタグラムには「#얼죽아」のハッシュタグが必ず並び、マフラーで顔を覆いながら氷入りコーヒーを持つ写真が若者の定番投稿になっています。
また、「ホットを頼むのは大人世代、アイスは若者」という世代的ニュアンスも広まり、家族や同僚とカフェに行ったときに世代間の違いを感じるエピソードとして語られることもあります。
韓国の街で、厚手のダウンジャケット姿の若者が片手にアイスアメリカーノを持って歩く光景は、まさに現代の韓国文化を象徴するシーンと言えるでしょう。
「アア」と呼ばれるアイスアメリカーノ
韓国では「アイスアメリカーノ」=「아이스 아메리카노」 を略して 「아아(アア)」と呼び、親しまれています。
地元の若者たちの会話を耳にすると、「아아」という言葉が飛び交うのが日常風景となっています。
カフェで「아아 주세요(アア ジュセヨ/アイスアメリカーノください)」と頼めば、一気に現地っぽい雰囲気になるので、ぜひ挑戦してみてください。
ちなみに、ホットアメリカーノも略語があり、「뜨아(ットゥア/뜨거운 아메리카노)」 と呼ばれています。
韓国のカフェを楽しむときには、こうした略語を使ってみるのも、現地の雰囲気を味わえる、面白い体験のひとつですね。
韓国の「빨리빨리(パリパリ)文化」とアメリカーノの親和性

引用元:https://www.hankyung.com/
韓国社会を語るうえで欠かせないキーワードに「빨리빨리(パリパリ/早く早く)文化」があります。
これは「できるだけ効率的に、できるだけ早く」という国民性を象徴する言葉で、日常生活からビジネス、交通、食文化に至るまで幅広く根付いています。
このスピード重視の韓国社会において、アメリカーノは理想的な飲み物でした。
抽出に時間がかかるラテやフラペチーノに比べ、アメリカーノはエスプレッソにお湯や水を注ぐだけで完成するため、提供までの時間が短く、テイクアウトに最適。
さらに氷入りのアイスアメリカーノなら「すぐに冷えて、すぐ飲める」という即時性もあり、せっかちな韓国のライフスタイルに見事にマッチしたのです。
実際、韓国ではカフェ利用の大半がテイクアウト。
出勤途中のオフィス街や大学キャンパスでは、手にしたアイスアメリカーノを小走りで持ち歩く人の姿が当たり前のように見られます。
この「速さ」と「手軽さ」によって、アメリカーノは忙しい社会人や学生にとって欠かせない相棒となり、韓国の都市文化に深く組み込まれていきました。
まとめ|アイスアメリカーノは韓国文化を映すドリンク
韓国でアイスアメリカーノが国民的ドリンクとなったのは、単なる嗜好の問題だけではないことがおわかりいただけたでしょうか。
90年代以降に急成長したカフェ文化、エスプレッソ文化が根付く前に「すっきり飲みやすいアメリカーノ」が受け入れられた背景。
冬でも氷入りを選ぶ「以冷治冷」の思想や、「凍え死んでもアイスアメリカーノ」を意味する若者スラング「얼죽아」など、独自の価値観や世代文化とも強く結びついています。
そして忘れてはいけないのが、韓国社会を支える「빨리빨리(早く早く)」文化。
すぐに作れて持ち歩きやすいアメリカーノは、効率を重んじるライフスタイルにぴったり合い、通勤途中や授業の合間に欠かせない存在となっています。
旅行者も、寒い冬に勇気を出してあえて氷入りを選んでみれば、韓国人の価値観や日常を肌で感じられるかもしれませんね。