韓国の就職・転職事情を調査!(20代編)
韓国の20代の就職&転職事情を調査!
これまで3回に渡って、韓国の就職事情・転職事情・進学事情をお伝えしてきました。
今回からは、更に年代別に区切って韓国の就職事情や転職事情をより詳しくお伝えしていきたいと思います。
記念すべき1回目は20代編!
ワーキングホリデーなどの制度も使って、韓国での就職にチャレンジしてみたいと考えている世代は、恐らく20代が最も多いんじゃないかなと予想します。
ぜひ韓国での就職・転職にチャレンジしてみたいと考えている20代の方は、今回の記事を参考にしてもらえると嬉しいです。
それでは、早速見ていきましょう♪
韓国の新卒就職率は67.7%
『韓国の就職事情を調査しました!(新卒編)』でもお伝えしましたが、教育部と韓国教育開発院が発表した「2021年高等教育機関卒業者就職統計調査」によると、2020年8月と2021年2月に一般大学・教育大学・産業大学・専門大学・技能大学および一般大学院を卒業した新卒者の就職率は67.7%でした。
新卒となると、ほとんどが20代だと思いますが、新卒者の就職率が67.7%ということは約3人に1人は無職ということになります。
では、20代全体で見てみるとどんな数字になるのでしょうか?
こちらも見ていきましょう。
韓国の20代の雇用率は?
7月10日に韓国の統計庁が発表した「6月雇用動向」によると、6月の韓国全体の就業者数は2,881万2,000人で、昨年同月より33万3,000人が増加しました。
全体の雇用率は63.5%で、なんとこの数字は1982年の統計作成以来、同月基準で最高水準を達成したとのこと!
失業率も2.7%で、同月基準で歴代最低水準です。
これは、介護需要の拡大・コロナからの日常回復などがもたらした保健福祉業・対面サービス業などでの雇用増加と女性・高齢層の経済活動参加拡大で雇用好調が持続しているからと分析されています。
では、20代に限定して雇用状況を見た時はどうでしょうか?
20代に関していうと、就業者数は昨年同月対比10万3,000人が減りました。
ちなみに、比率で見てみると6月の20代の雇用率は61.6%(20~24歳:46.6%、25~29歳:72.8%)、失業率は6.3%(20~24歳:5.9%、25~29歳:6.6%)でした。
昨年同月対比でみると、雇用率はUP・失業率はDOWNしているのですが、それなのになぜ就業者人口は減っているのかというと、少子化の影響。
20代の人口自体が、昨年同月対比19万5,000人が減少しました。
実際に、年齢別就業者の昨年同月対比増減を見てみると、60歳以上で34万3,000人、50代で7万1,000人、30代で7万人が各々増加していますが、20代は10万3,000人が減少しているというから深刻です。
日本の場合は?
総務省統計局の労働力調査によると、2023年5月の「15~24歳の就業率」は48.4%、「25~34歳の就業率」は86.8%でした。
完全失業率を見てみると、「15~24歳」は4.0%、「25~34歳」は3.7%。
日本の場合は20代で区切られておらず、韓国の数字と比較は少ししにくいですが、どうやら失業率は日本の方が低そうです。
就職活動をせずに休んでいる20代が約36万人!?
歴代最高水準の雇用率を記録しているにもかかわらず、求職活動や就職準備をせずに「とりあえず休んでいる」という青年層が増えています。
人口減少によって、5月の20代の就業者数と失業者数は昨年同月対比、それぞれ約6万人程度が減少しました。
しかし、このような人口傾向とは逆行して、「とりあえず休んでいる」という状態の20代は、1年前より3万6,000人が増えて35万7,000人にも達しています。
「とりあえず休んでいる」というのは働き口がなくて就職できなかったのではなく、最初から働き口を探しもしなかったという意味。
20代人口のうち、5.8%がこのような状態に該当しているとのこと。。
60歳以上の高齢層を除くと、全年齢層を通じて「休んでいる」人口が増えた年齢層は20代が唯一というから、驚きですね。
「休んでいる」理由は?
20代の休んでいる人口は30代・40代・50代よりも多かったそう。
働き盛りの20代が求職もせずに休んでいる理由としては「希望する賃金水準や勤労条件の働き口がなさそうだから」という回答が最も多く、その次が「教育・技術・経験が不足しているから」「専攻や経歴に合う仕事がなさそうだから」という理由でした。
単に「働き口がなさそうだから」という回答は相対的に少なかったそう。
事実、中小企業は働く人が見つからず困っている状況で、現実の働き口と若者たちが望む働き口の不一致が深刻な状況なんです。
「休んでいる」という若者は5年前までは20万人台でしたが、2019年に30万人を越えると、それ以降はずっと30万人台を維持しています。
大変な仕事を忌避する若者世代の職業観にも理由はありそうですが、より根本には雇用市場の二重構造があると言われています。
韓国の雇用市場では、高い賃金を受け取り且つ社会保障も確固とした12%の大企業・正規職と、低い賃金に社会的保障も不足した88%の中小企業・非正規職間の二重構造が深刻となっています。
20代のうちの大企業と中小企業間の賃金格差は1.4~1.6倍ですが、40代には2.2~2.3倍、50代前半には2.5倍とその格差はますます広がっていきます。
若者層が自身のキャリアをどの会社からスタートするかで、生涯所得と生活の質が大きく変わってくるわけです。
そのため、雇用市場への参入自体が遅れ、求職断念も多くならざるを得ないと分析されています。
韓国の20代の離職率は?
韓国の統計庁が発表した「2021年働き口移動統計」によると、すべての年齢帯で離職率は増加傾向にありますが、その中でも特に20代の離職率が最も高かったことが分かりました。
上の「年齢別働き口移動率」の表を見てみましょう。
紫色で示されているのが「入職率」、オレンジ色で示されているのが「維持率」、緑色で示されているのが「離職率」となります。
年齢別推移を見ると、離職率は30歳未満(15~29歳)で20.9%と最も高い結果となっていますね。
しかも20代は、入社1年以内に転職を試みる人が70%程度にもなるという驚きの調査結果まであるんです!
詳しく見ていきましょう。
20代の10人に7人が1年以内に離職!?
就職サイトである「ジョブコリア」が転職経験のある男女の会社員1,024人を対象に、初めての転職経験に対するアンケート調査を行った結果、最初の離職時期には年代別の差があることが分かりました。
上の表は、「会社員の年代別 最初の離職時期」を表したものです。
オレンジ色が20代、青色が30代、紫色が40代、黄色が50代以上を表しています。
年代別に見てみると、50代以上の会社員の場合は最初の離職時期が「入社後5年以降」という回答が37.5%で最も多い結果でした。
40代は「入社後2~3年未満」が27.7%で最も多い結果に。
30代会社員の場合は「入社後1~2年未満(25.9%)」が1位を占めましたが、20代に関しては「入社後6ヶ月から1年未満」で初めて離職した人が29.0%で最も多い結果となりました。
すなわち、世代によって会社員の初離職時期は早まっているということですね。
上の表を見ても分かるように、20代を表しているオレンジ色の線はグラフ内の上の項目で特に比率が高く見えます(上から「入社後3ヶ月未満」「入社後3~6か月未満」「入社後6ヶ月から1年未満」「入社後1~2年未満」)。
ちなみに、初めて転職することになった理由としては、「業務過多および残業でプライベートとの両立が難しいため(39.2%)」が最も多く、続けて「低い年俸(33.4%)」「会社のビジョンおよび未来に対する不安(27.3%)」「上司および同僚との不和(16.9%)」「キャリア管理のため(12.3%)」などと続きました。
しかし、ここまで年代別の差が出てくると、今の20代は離職や転職に関して他の世代とは違った価値観を持っていそうな気もしますよね。
ここからは、20代の離職や転職に関する認識を探ってみたいと思います。
韓国の20代の転職に対する認識は?
今の韓国の20代の間では「終身雇用」という概念が薄くなり、職場は業務関連技術や経験を蓄積して広いネットワークを形成するところだという認識も次第に広がっていることから、離職が否定的なイメージから抜け出しつつあると言われています。
それを示すように、韓国の会社員の2人に1人は職場に通いながら転職活動をし、新しい職場が決まればすぐに転職するといういわゆる「乗り換え転職(환승이직・ファンスンイジㇰ)」が当然だと考えていることが分かりました。
そして、この乗り換え転職の傾向は年代別で見ると、20代で特に高いんです。
ジョブコリアの調査結果によると『乗り換え転職についてどう思うか』という質問に対し、全体回答者の51.0%(2人に1人)は当然だと答え、 「あり得る」と答えた回答者も47.1%に至りました。
反面、「望ましくない」と答えた会社員は1.9%に過ぎない結果に。
職場を辞める際の所得や業務経験の空白期を最小限に減らし、長くなりかねない求職期間の焦りを未然に防ぐという「乗り換え転職」の利点が広く認識された結果と言えますね。
特に20代の間では「焦らず転職活動をするために乗り換え転職をする」という答えた人が43.0%で最も高かったそう。
日本でも乗り換え転職が一般的ではありますが、否定的な見方をする人も一定数はいるように思います。
年代別に「乗り換え転職」への認識を見てみると、20代の会社員のうち乗り換え転職が当然だと答えた回答者は54.0%で最も多く、続いて30代(52.0%)、40代以上(48.6%)の順となりました。
ちなみに職種別に見てみると、IT職・営業職の会社員の中で「乗り換え転職が当然だ」と答えた比率が最も高かったそうです。
転職を通じて成長できる!
同じくジョブコリアがMZ世代の男女の会社員485人を対象に「MZ世代が転職する本当の理由」というテーマでアンケート調査を行った結果、MZ世代の会社員たちは正当な待遇を受けられない時には転職を試み、転職を通じて成長できると考えていることが分かりました。
『いつ転職を決心するのか』という質問に対しては「働いた分の正当な補償(年俸など)をもらえないと思う時」という答えが37.0%で最も高い結果に。
続けて、「業務が退屈で、自らバーンアウトしたと感じる時(26.7%)」「会社が成長する可能性がないと判断した時(25.2%)」「どんぶり勘定で運営される組織を見た時(25.0%)」となりました。
MZ世代は転職を成長機会と認識していて、彼らは転職イコール「新しい技術と経験を学べる機会(60.2%)」「キャリア管理のために必ず必要な過程(53.4%)」とも答えています。
そして、驚くべきは2022年にはMZ世代の会社員の10人中、9人近くが転職を試みていたということ。
ほぼ全員とも言える数字ですね!
87.4%が2022年に転職を試み、そのうち63.3%は転職に成功。
24.1%は転職を試みましたが成功できなかったと答えました。
転職を試みていない人がむしろ少なく、12.6%という数字には驚きです。
転職に前向きなMZ世代ですが、離職時に守らなければならないエチケットとしては「自分が引き受けた業務は退社する日までに責任を持って処理しなければならない(53.2%)」「後任に引継ぎおよび教育を行ってから退社しなければならない(38.1%)」などを挙げており、「立つ鳥跡を濁さず」のマインドもしっかりしているよう。
公務員も例外ではない!?
韓国では、かなり競争率が高いと言われている公務員。
公務員試験に合格するために、狭い考試院(コシウォン)に入って勉強に明け暮れるという姿はドラマなどでもよく登場していますよね。
公務員というと安定しているというイメージがありますし、それだけ苦労して公務員になったんだから一般企業の場合とは異なって、離職率は低そうと感じますよね。
しかし、20代の公務員退職者は5年前に比べて2倍近く増えているそうなんです。
しかも、20代の5級公務員のうち、10人に6人(61.7%)は「転職したい」と考えているというから驚き。
これは、年齢および役職の中で最も高い水準だそうです。
ちなみに、5級公務員とは外務考試・司法考試などと共に3大考試と呼ばれるほど難しい行政考試を通過してこそ任命を受けることができる席。
日本で言うと、国家Ⅰ種のいわゆるキャリア官僚候補生とも言える位置づけとなり、9級や7級に比べて処遇がはるかに良く、すぐに事務官として入職できるという長所があります。
退職後は年金の恩恵を受けることができますし、在職中にはよほど大きなミスを犯さない限り定年まで継続して仕事ができるという安定したポジションともいえます。
試験勉強が難しいのはもちろんのこと、数千人ずつを選ぶ他の職級試験と比べて選抜人員がはるかに少なく、2021年度の国家公務員5級採用人員はわずか321人に過ぎなかったほど競争率の高い席なのに、どうして他の公務員よりも転職希望率が圧倒的に高いのでしょうか。
その理由は、給料。
5級公務員の行政考試を通過することと比較すると、相対的に就職しやすい大企業よりも5級の新入公務員の処遇が低いというわけです。
この格差は成果給まで含めればさらに広がっていきます。
だからといって、業務量が大企業に比べて少ないということももちろんありません。
長い目で見ると転職してしまうのはもったいないようにも感じますが、それもやはり個人個人の価値観ですね。
【まとめ】韓国の就職・転職事情を調査!(20代編)
今回は「韓国の就職・転職事情(20代編)」を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
若い世代だからこそ、転職などにもより前向きな20代の姿が垣間見えましたね。
次回は、30代編を見ていきたいと思います。
結婚や出産をしている比率も増える30代ではどのような変化があるのでしょうか?
次回もお楽しみに~!